陰陽師―瀧夜叉姫(上・下) 夢枕獏

 一気に読んだ。この方の陰陽師(おんみょうじ)シリーズは文庫化され次第もらさず読んでいる。通常は短編の集まりなのだが今回は真の長編らしい。しかし最初読み進めるうちにはいつもの短編集といったオモムキだが、それぞれが中盤あたりから繋がってくるあたりで一気読みは加速してくるな。長編小説を書く人の頭の中はどうなっているのだろうと思ったりするワケだけど、なんとなくわかったような気にさせてくれる。

 内容はいつもの陰陽師安倍晴明(あべのせいめい)と源博雅平将門の復活近辺に巻き込まれ...といったところで、平将門は好みの武将であり、現在都心の保険屋さんのビルの谷間にひっそりとある首塚を見た事を思い出したりした。表題の瀧夜叉姫とは平将門の娘ということで復活近辺のキーマンという事である。この方は魅力的な漢を表現させたら相当にうまい。乙女に関してのソレは少々劣り浅いのが残念な気もする。あとがきにもあるように映画向けとして書いたらしく、緻密な描写はR指定になってしまい避けたのかもしれない。

 それにしても最近の文庫本の値段は高いなぁ、ハードカバーを避けている意味がない気がする。内容に関しての不満はないけれど、せめて500円玉ワンコインくらいが望ましい